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はじめに

私は日本人に感動と誇りを与えられるような仕事をしたいと考えています。自分がこれまで培ってきた能力を十分に活用できるという観点と、幼少以来のあこがれであり興味を持続し熱意をもって取り組めるという観点から、その実践として、宇宙探査ミッションの成功に貢献し、日本の宇宙探査技術の発展に寄与して、それを世界のトップに導くことを目標にしたいと考えています。そして、その実現のために、以下の4つの面からのアプローチを考えています。

技術(Technology
工学(Engineering
展望(Vision
教育(Education


宇宙探査ミッション成功への第一歩は、有意義で魅力的なミッションを設定することです。そのミッションの実現性を裏打ちし、一方でミッションに限界を与えるのが専門技術(Technology)です。技術の停滞はミッションを陳腐化させ、技術の発展は、より高度なミッションへの道を拓きます。まず、アストロダイナミクス分野の専門能力を磨き、専門技術の発展に寄与し、ミッションに対する制約を緩和して、より高いレベルの宇宙探査ミッションの設定に寄与したいと考えています。

設定された宇宙探査ミッションは、システムとして実現される(設計・製造され、運用される)ことにより、初めて成果を生み出します。技術の進歩とミッションの高度化の結果、宇宙探査システムは複雑なものとなり、それを作り上げるためのシステム工学(Engineering)の重要性が高まっています。多くのプロジェクトにたずさわっていく中でシステム開発能力を高め、その経験に基づきシステム工学の発展に貢献し、より高いレベルの宇宙探査ミッションを可能にする高度な宇宙探査システムの実現に寄与したいと考えています。

以上は日本の宇宙探査技術の発展に対するプレーヤー個人としての寄与にあたります。一方で、宇宙探査は大事業であり、多数のプレーヤーの力を合わせることにより実現・成功するものであります。したがって「日本の宇宙探査技術」を考える場合、「プレーヤー個人の能力」という観点に加えて、「コミュニティとしての総合力」という観点も重要となります。以降は、コミュニティをリードし、その維持・発展をサポートするという、日本の宇宙探査コミュニティに対する貢献にあたります。

コミュニティの総合力を高めるためには、個々のプレーヤーの能力を高めることはもちろん重要でありますが、多くのプレーヤーの関心の対象や活動の目標を重ね合わせ、プレーヤーの能力を集中して相乗作用(Synergy)を引き出していくことが重要であります。そのためにコミュニティのあり方や活動についての展望(Vision)を積極的に発信することにより、コミュニティをリードしていきたいと考えています。

コミュニティの総合力を維持・発展させていくためには、コミュニティを支える優秀な人材の継続的な供給が欠かせません。大学院教育(研究指導)にたずさわり、高い専門能力とシステム開発能力を有し、広い展望と教育能力を持つ、次世代のプレーヤーを育成することにより、コミュニティの維持・発展に寄与していきたいと考えています。

「技術(Technology)」「工学(Engineering)」「展望(Vision)」「教育(Education)」は、それぞれ日本の宇宙探査技術の発展のための重要な要素でありますが、個人の活動の中でこれらのアプローチにバランスよく取り組むことにより、個々の活動のクォリティを高めることができると考えてます。

宙航空研究開発機構
宇宙科学研究本部

川勝研究室(宇宙航行システム、月・惑星探査)

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