システム工学(Engineering)
これまでSELENEの開発にたずさわり、今後もPLANET-C、はやぶさ-2、SELENE-2の開発にたずさわっていく中でシステム開発能力を高め、その経験を研究に反映していきたいと考えています。
近年JAXAでもシステム実現のための方法論としての「システムズエンジニアリング」が重視され様々な活動が展開されてます。内容はアポロ計画時にほぼ確立されたものですが、それを再整理・再確認し開発業務の中で徹底していくという姿勢には賛同しますし、自身がたずさわるプロジェクト業務においても心がけていきたいと考えています。しかし、それが問題の本質か、という点には疑問を持っています。
問題の本質は、打上手段の大型化にともない宇宙機も大型化・複雑化しているのに、宇宙機の設計・解析手法がそれに追いついていない点にあると考えています。
・ミッション要求がシステムを構成する様々な要素と複雑に関係するため、要求を分割し各要素に配分することが難しい
・「実現されたシステムが最適設計になっているのか、まだ改善の余地があるのか、そもそもミッション要求を満足しているのかを評価・検証することが難しい
・実現されたシステムが想定どおりの動きをしてくれるのか、想定外の動きをすることはないのか、それは運用中つねに保証されるのかを評価・検証することが難しい
いずれも宇宙機が複雑化する中で発生し、認識されてきた新たな問題であります。その解決策の一つとして、システムレベルの動的な解析(System Dynamic Analysis)を研究対象に考えています。計算機上に構築された宇宙機・環境のモデル(シミュレータ)を核とし、その入力の設定、出力の評価まで自動化することにより解析効率を大きく向上させ、従来の方法では不可能であったシステムの系統的・網羅的解析を実現します。今後たずさわる実ミッションを題材とし、そのミッション解析、故障影響解析等に適用したいと考えています。