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1.在学中の研究
東京大学在学中は、「宇宙輸送システム」を研究対象の中心に据え、そのシステム構成・軌道設計等の研究に携わってきました。学部4年から博士課程に至る6年間の研究の核をなす3つの資格論文を中心にその内容を説明します。
学部卒業論文では、地球-月間の軌道間輸送機(OTV)の概念設計についての研究を行いました。ペイロード側からマヌーバ時の最大加速度に制約が課される場合や、地球帰還時に空力ブレーキを用いて減速する場合などの機体サイジングの手法を確立しました。設計結果は月-地球間を結ぶ輸送系の総コストの算出に反映され、OTVのさまざまなコンフィギュレーションが総コストに与える影響を解析しました。
続く修士論文では、ロケット打上軌道の自動設計についての研究をおこないました。実用的な打上軌道の設計は多変数多制約の設計問題ととらえることができます。この論文では、設計知識を用いることにより自動的かつ効率的に実用的な打上軌道を設計する手法を確立しました。設計手法の有効性は、H1ロケットの実際の打上軌道と、本方法により設計された打上軌道とを比較することにより確認されました。また、この研究に付随して、種々のパラメータ誤差、外乱が軌道に与える影響を調査し、外乱に強い打上軌道の設計法の指針を示しました。
博士論文では、楕円軌道上の剛体の姿勢運動についての研究を行ないました。楕円軌道上では重力傾斜トルクによって剛体の回転運動が励起されることを示し、その運動の特性を詳細に解析しました。次に、近点通過時の姿勢を適切に設定することで回転運動が制御できることを明らかにし、複数周回にわたり回転を加速する場合の制御方法を示しました。また、この運動の応用として、テザーを利用した軌道間輸送を提案し、その輸送能力についても検討しました。在学中は、これらの研究に加えて、他研究者との共同研究として「惑星間ミッションの基本的設計手法」「低推力エンジンを用いた場合の惑星間軌道の最適化」「クラスタ衛星の軌道設計」の研究にもたずさわりました

宙航空研究開発機構
宇宙科学研究本部

川勝研究室(宇宙航行システム、月・惑星探査)

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